唇が薄い方を厚くするやり方、法令線の溝が深い方へのカバー、鼻背部を高くしたい方に対し、当院では「真皮脂肪」を移植する時があります。真皮脂肪移植とは文字通り真皮と脂肪を合せた自分の組織を生かした移植法です。そして2つの組織を合せて移植することを「複合移植」と云いますが、真皮脂肪移植はまさしく複合移植の一種なのです。さらに真皮脂肪移植は自家組織移植(自分のもの)でありますので、後述しますが出来るだけ身体の目立たない部分から採取します。自分の組織ゆえに安全で感染にも強く、永久に長持ちします。
又、血管がついていない遊離移植と云うのも特徴のひとつでしょう。臓器移植をする時などはドナーから持ち込まれた組織をレシピエント・サイト(移植部)にくっつけるのには顕微鏡下で血管同士を繋ぎ合せる技術が必要なのですが、真皮脂肪移植は血管を繋がない遊離移植なのです。その為、大きな組織は移植出来ません。せいぜい6×2cm位の大きさなのです。この大きさの特徴が生かされ丁度良いのが唇を厚くしたり、鼻を高くしたり、鼻唇溝(いわゆる法令線)、マリオネットラインや、稀には包皮などへの応用なのです。
それではこの真皮脂肪をどこから取ってくるのかも非常に興味がある所でしょう。自分の身体のどこに傷をつけたら良いのか?大切な要素のひとつですが、実は一番取りやすくて傷が目立たないのが「ソケイ部」と云う所です。真皮脂肪は内股の下着に隠れる所から採取します。下着に隠れて大腿部の折れ曲がりに傷が一致しますから傷はあまり目立ちません。(図を参照して下さい)
実は皮膚と云うものは組織的にみると上皮(表面の皮の部分)と真皮(上皮の下層)から成り立っています。そして真皮の下に脂肪層があります。この真皮と脂肪を含めて、ある程度の厚さを移植する事によって唇を厚くしたり、鼻を高くしたり、マリオネットラインや法令線を浅くしたりするのです。その際、各々の部位で傷を目立たなく移植組織を挿入可能です。唇に対しては粘膜部、法令線と鼻には鼻腔内切開、マリオネットラインは口腔内から真皮脂肪を入れていきます。
自分の組織ですから上記した如く永久的であり、感染に強く、傷も目立たなく、安全に出来ると云うのが真皮脂肪移植の特徴とする所であり、この真皮脂肪移植は形成外科的手技の応用でもあります。単純にヒアルロン酸、レディエッセ、エランセなどの注入物で物足りない方は真皮脂肪移植と云う一種の軽い手術手技があるのもご認識下さい。私は過去にこの方法を第114回美容外科学会にて報告しております。
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